MONOの取扱い説明書

みなさんこんにちは、MONOです。

MONOは、1989年に立命館大学の学生劇団OBであった土田英生を中心に結成した劇団です。
メンバーは代表で作・演出の土田英生、役者の水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博の5人です。

結成からこれまでの間に、42回の公演を行ってきました。
1999年の『その鉄塔に男たちはいるという』では第6回OMS戯曲賞大賞をいただくなど、27年間には色々なことがありました。

さて、ここでは《とっておきのMONOの楽しみ方》をお伝えします。
「はじめまして」の方には“あなたのMONOの楽しみ方”を探す手引きに。
MONOをよくご存じの方にとっては、“新しいMONOの楽しみ方”を探すきっかけにしていただければ嬉しいです。

MONOをはじめて観る方へ

「MONOというのはどんなお芝居をするのだ?」、とこちらのサイトにお越しくださった皆さま、または偶然こちらのページに迷い込んでしまった皆さまに、ちょっとだけご紹介を。……と言っても自分の体験談です。
私自身は学生の頃に初めてMONOと出会いました。それまであまりお芝居を観たことがなくて、お芝居自体に「なにやら大げさで観ているこっちが恥ずかしい」という印象を持っていました。偶然MONOのお芝居に出会いまして、「お、このお芝居は恥ずかしくない」と思ったのが興味を持った理由です。
それから稽古を見学する機会があって、すると、ただただ早口言葉のようにセリフを言い合っている演者の皆さんがいました。話しかけられたかと思って返事をしたらセリフだった、ということも度々でした。
MONOが当時の私にとって恥ずかしくなかったのは、俳優の皆さんが揃いも揃って飄々とお芝居をされていて、しかも余計なことを考える間がなく小気味よく物語が展開するので、舞台上の登場人物に共感したり、「バカだなあ」と笑ってる間に終わってしまったからなのかなと思います。あとあと考えるに、そうやって「余計なことを考えずに物語に引きこむ」ための仕掛けはたくさんされています。
自分の理解の一歩手前で耳に入ってくる次のせりふ、ちらっと自分の暗部を見せられた気分になるキャラクター……。
華美な要素が少ないお芝居ですが、細かく丁寧に張られた仕掛けに、観終わって数日後に気づくということもあって、そんなこともMONOを観劇するの楽しみのひとつかなと思います。
それは舞台で観ていただけるだろうと、観ていただけるはずだ…と思います。 ちなみに「何かひとつ面白いところを見つけられたらそのお芝居は良かったってことだよ」とある人から言われたことをきっかけに今はどんなお芝居も楽しめるようになりました。
皆さんもぜひ、自分なりの「MONOの面白いところ」を探してみてください。

MONO制作 垣脇純子

NEW!今井朋彦[文学座]の見方

突然ですけど、MONOとSMAPって似てません?
どちらもローマ字4文字だし、いろいろあって今は男5人だし、グループでもソロでも活躍していて、あちらが25周年ならMONOは26周年・・・。 もちろん活動するフィールドやファン層、いろいろ違うところもあります。もし土田さんを残して4人が脱退しようとしても、土田さんの方が4人に謝りそうだし(笑)。
いや、何でこんな話を持ち出したかというと、長く続くって何だろうっていうことなんです。長く続く=飽きられない秘訣って何だろうって考えて、MONOとSMAPを思い浮かべると、行き着くところは「品」なんです。まあSMAPの方は、最近彼らを取り巻くあれやこれやに「品」がないことがバレちゃったところがありますけど、本人たちにはやっぱりどこか「品」がある。おしゃれとかカッコよさという意味の品じゃなくて、他者との距離の取り方に品がある。それはMONOを観ていても感じるんです。ものすごくチームワークがとれていながら、個がクッキリしていて、でも押しつけがましいところがない。そこから繰り出される独特のテンポ、間合いはちょっと真似できないものがあります。きっと皆さんとても冷静で、とても大人なんでしょうね。あ、楽屋では子供のように「とても」無邪気なところも知ってますけど(笑)。

今井朋彦

文学座所属。
劇団内外を問わず数多くの舞台に出演。野村萬斎、三谷幸喜、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、マキノノゾミ、平田オリザ、白井晃、鐘下辰男、鵜山仁ら各氏との共同作業を経験する。
また30代から舞踊家木佐貫邦子氏に師事。同氏とのコラボレーション作品や、パパ・タラフマラへの出演など身体表現にも挑戦。近年は演出家としても活動している。2010年に土田英生セレクションvol.1「—初恋」に出演。

NEW!谷賢一[DULL-COLORED POP/Theatre des Annales]の見方

べらぼうに本がうまい。──MONOの印象は、ずっとそうです。作品ごとに雰囲気や方向性は違っても、それを生み出すために必要な構造が戯曲の背骨に通っていて、笑ったり驚いたりしているうちに、おかしな場所へ連れて行かれる。観終わった後で振り返ってようやく、「あぁ、だからああ書いていたいのか。うまいなぁ」と思わされる。それこそ戯曲の技術ではないでしょうか。「うまい」と客に気付かせずに、うまい効果を生む。
ふだんお会いする土田さんは、喩えるなら「何の仕事してんだかわからない親戚のおじさん」風で、ヘラヘラチャラチャラおどけてますが、道化というのはサービス過剰な、人の気持ちに過敏な人が演じるものと決まっております。サービス過剰で人の気持ちに過敏だから、ああいうやさしい本が書けるんでしょう。
MONOはうまい。やさしい。おもしろい。これだけ褒めたら照れてくれるかな? だけどみんな本当です。

谷賢一

作家・演出家・翻訳家。1982年、福島県生まれ、千葉県柏市育ち。DULL-COLORED POP主宰。Theatre des Annales代表。 明治大学演劇学専攻、ならびにイギリス・University of Kent at Canterbury, Theatre and Drama Study にて演劇学を学んだ後、劇団を旗揚げ。「斬新な手法と古典的な素養の幸せな合体」(永井愛)と評された、ポップでロックで文学的な創作スタイルで、脚本・演出ともに幅広く評価を受けている。 2013年には『最後の精神分析』の翻訳・演出を手掛け、第6回小田島雄志翻訳戯曲賞、ならびに文化庁芸術祭優秀賞を受賞した。また近年では海外演出家とのコラボレーション作品も多く手がけ、シディ・ラルビ・シェルカウイ『PLUTO』(シアターコクーン)、アンドリュー・ゴールドバーグ『マクベス』(PARCO劇場)、デヴィッド・ルヴォー演出『ETERNAL CHIKAMATSU』(梅田芸術劇場/シアターコクーン)などにそれぞれ翻訳・脚本・演出補などで参加している。 近年の代表作に、梅田芸術劇場/シアターコクーン『ETERNAL CHIKAMATSU』(脚本)、あうるすぽっと『TUSK TUSK』(演出)、KAAT『ペール・ギュント』(翻訳・上演台本)、PARCO『マクベス』(演出補)、東宝『死と乙女』(演出)、シアターコクーン『PLUTO』(上演台本)、DULL-COLORED POP『夏目漱石とねこ』(座・高円寺)・『河童』(吉祥寺シアター)、Theatre des Annales『トーキョー・スラム・エンジェルス』(青山円形劇場)、東京グローブ座製作『ストレンジ・フルーツ』、『モリー・スウィーニー』(シアタートラム)などがある。

中川晴樹[ヨーロッパ企画]の見方

MONOは、良い歳したおっさん達がずっと悪ふざけしています。何でそこで歌いだすのかとか、何の踊りだよとか、しっかりしろよとか、そう考えるのが正解で、お客さんも一緒に、おっさん!(笑)ってツッコミながら観ると良いです。 そのうち、作品は思わぬところに着地します。飛びきり明るかった日向から急に日陰に入り込んでしまうような。もうやめてくれよ!ってなる。なのに、終わった後は妙にすがすがしい。その説得力!
土田さんの脚本と演出力、揃いもそろった個性的な役者たち、美しい舞台美術に、関西トップクラスの音響と照明が組み合わさった、まさに総合芸術。それがMONO。
歳を重ねたからこそ出来る事ってある。それは今の僕らには逆立ちしたって出来ない。 これから40代を迎える僕らヨーロッパ企画は、学生時代からずっとMONOの背中を見てきたし、これから先も僕たちの前を走って下さっている、そういう存在なのだなーと目が離せないわけです。

中川晴樹

ヨーロッパ企画 俳優。
1977年愛知県生まれ。立命館大学入学後に立命芸術劇場に入団。
2000年にヨーロッパ企画第5回公演「苦悩のピラミッダー」に日替わりゲストとして出演。
それをきっかけに、以降ほぼ全ての作品に出演。2012年にMONO第39回公演「少しはみ出て殴られた」に出演。
主な出演作品として、舞台「NORA」(2013年・カンパニーデラシネラ)、映画「バクマン。」(2015年)、映画「鍵泥棒のメソッド」(2012年)、映画「曲がれ!スプーン」(2009年)、テレビドラマ「ロス:タイム:ライフ」(2008年)などがある。

・雑誌ピクトアップにて「ヨーロッパ企画・中川のこめすかでんでん」を連載中。
・ヨーロッパ企画Presents「ハイタウン2016」(5月開催予定) 会場:元・立誠小学校

横山拓也[iaku]の見方

MONOの魅力はたくさんあり過ぎるのでどこを紹介するか難しいのですが、出来るだけ他の方と被らなさそうな部分に光をあててみます。 一度気にしてみてほしいことがあるのですが、MONOの作品中には絶対に固有名詞が出て来ないんです。たとえば「AKB」とか「巨人」とか「麻生太郎」とか「ファミリーマート」とか。なんなら「コンビニ」という言葉さえギリギリ出て来ないんじゃないでしょうか。これは土田さんの劇作のルールのひとつで、特に秘密にされていることじゃないと思うので書いても大丈夫だと思うのですが、固有名詞を使うと日常の身近な記憶に結びついてしまって、お客さんの意識や思考が劇場(劇世界)の外に出てしまうからだと聞きました。既存のイメージに頼らない世界観は魅力ですし、劇作家のこだわりが見えてかっこいいです。ちなみに僕も真似してます。観劇中に意識しちゃうとワヤなので、観終わってから反芻して楽しんでください。

横山拓也

1977年大阪生まれ。iaku主宰、劇作家、演出家。アンタッチャブルな題材を小気味良い関西弁口語のセリフで描き、議論・口論・口喧嘩をジロジロ眺める、覗き見できるセリフ劇を発表している。「消耗しにくい演劇作品」を標榜し、全国各地で再演ツアーを精力的に実施。「エダニク」で第15回日本劇作家協会新人戯曲賞(2009)、また「人の気も知らないで」で第1回せんだい短編戯曲賞大賞(2013)を受賞。

川口大樹[万能グローブ ガラパゴスダイナモス]の見方

MONOという劇団を語る上で、キーワードを一つ探すとしたら「カワイイ」の一言に集約されるのではないか、というのが僕の見解です。まず「MONO」って劇団名がカワイイ。字面といい、音の響きといいカワイイ。それに土田さんの描く登場人物はみんなどこか抜けてて、カワイイ。で、一回り近く年下の僕が言うのもあれですけど、それを演じる皆さんがカワイイ。水沼さんのちょっと怒りつつもにやっと笑う感じとか、奥村さんのいじられてシュンとなる感じとか、金替さんの微妙にズレてるけど一生懸命な感じとか、尾方さんの年下なのに必死にまとめようとする感じとか、適切な言葉を探すならやっぱりカワイイ、じゃないすかね。土田さんに関しては、カワイイを通り越して乙女なんじゃないかなと思う事すらあります。ココナッツオイルがお肌にもたらす効能をあんなに熱心に話してくれる大人は、僕の周りに土田さんをおいて他にはいません。
MONOカワイイ説を唱えてる人、僕以外にもいるんじゃないかとグーグルで検索してみましたけど、残念ながら該当する記事は見つかりませんでした。案の定かわいい消しゴムがいっぱいヒットしました。でも逆にチャンスですね。MONO=カワイイの切り口はまだ未開拓ってことですから。全国のカワイイもの好きに劇場に足を運んでほしいなあ、MONO。でも土田さんのことだから、きっとカワイイだけじゃ帰してくれないんだろうなあ。楽しみ!

川口大樹

福岡の劇団「万能グローブ ガラパゴスダイナモス」で、脚本・演出を担当。“ある一定の状況下でもがく登場人物の葛藤やフラストレーションをポップに描き、笑いに昇華させたシチュエーションコメディ”で幅広い観客層から支持を得ている。演技指導やコラム執筆、外部への脚本書下ろしの他、様々なイベントの企画構成も手がけるなど、福岡を中心に雑多に活動中。